診療科目・予防・健康診断

皮膚科

完治をめざせる皮膚病は、治療と再発防止を。完治が困難な皮膚病は、適切な管理と症状の軽減を

皮膚病の主な症状は“痒み”です。この“痒み”という症状を放置していても、命に係わることはほぼありません。しかし、この痒み症状は、犬猫自身が辛いだけではなく、痒みと痛みで一晩中鳴き続けるペットたちの声を聞くことで、共に生活する飼い主様に辛い思いを日々抱えさせ、生活の質を著しく低下させる原因となってしまいます。一刻も早く痒みという症状を軽減させ、家族みんなが安心して生活ができる日々を取り戻しましょう。

痒み症状の原因は、細菌や寄生虫などの感染症や、食事アレルギー、アトピー、ホルモン疾患など多岐にわたります。原因をしっかりと診断して、治療を行っていきましょう。何度も再発を繰り返すような、なかなか治りにくい皮膚病は、根底に別の原因となる疾患が存在することも少なくありません。

自宅での食事管理やシャンプー治療など、皮膚病の治療には飼い主様のご協力が必要不可欠です。日々の皮膚のケアを含め、お気軽にご相談ください。


主な皮膚疾患


【膿皮症】
膿皮症は『ブドウ球菌』という細菌が皮膚の細胞内に感染して起こる病気です。ブドウ球菌は皮膚に常に存在する細菌ですが、正常な免疫状態の皮膚であれば細胞内に入り、膿皮症を発症することはありません。しかし、生活環境や犬種、間違ったスキンケア、寄生虫感染、アトピー性皮膚炎などにより皮膚の免疫状態が悪化することで、ブドウ球菌が皮膚に感染することを許してしまい、発症します。

抗生剤を適切な期間投与し、薬用シャンプーなどを併用して治療していきます。難治性の膿皮症の場合、耐性菌の発生が疑われるため、細菌培養・薬剤感受性検査が必要となる場合があります。


【アトピー性皮膚炎】
アトピー性皮膚炎は、完治させることが困難な疾患の一つです。生涯にわたって上手に付き合わなければならないこともあります。一般的に1〜3歳前後で発症し、季節の変化に合わせて症状が悪化したり、通年性に進行したりすることがあります。特に耳や眼・口周り、足先、下腹部、脇の下に症状がでます。痒みのため、掻いたり舐めたりすることで、二次的な皮膚病を引き起こします。

快適な生活を送るためには、皮膚の状態に合わせた薬を使用し、感染や炎症、強い痒みをしっかりとコントロールして、シャンプー、サプリメント、食事療法などで皮膚バリアーの強化・改善を行います。


【食物アレルギー性皮膚炎】
食物中に含まれるタンパク質に対して、免疫機能が過剰に反応してしまうことで発症する病気です。アトピー性皮膚炎と類似した部位に痒みの症状がでますが、腰背部に症状が出やすく、下痢や便の回数が増えることがあります。アトピー性皮膚炎と併発することも少なくありません。

アレルギーの原因となるタンパク質を避けたフードを与えることが治療となります。血液検査にて、自己免疫機能が過剰に反応している食物を、調べることもできます。


【ノミアレルギー性皮膚炎】
ノミが吸血する際に、ノミの唾液が体内に入ります。その唾液成分に対してアレルギー反応を起こし皮膚症状が出る病気です。3~6歳以上で、ノミが活性化する春から初冬にかけて発症・悪化することが多く、症状としては、お腹周りや腰回りに強い痒みや皮膚病変がでることが特徴です。適切なノミの駆虫と短期的なアレルギー治療を行うことで、快方へと向かいます。

痒いために皮膚を舐め、ノミを食べてしまい、消化管内寄生虫(瓜実条虫)感染症を起こすことがあります。発症してからの治療ではなく、普段から行う適切なノミ予防が重要です。


【マラセチア性皮膚炎】
『マラセチア』という真菌(カビ)が引き起こす皮膚病です。マラセチアは皮膚に常在する菌であり、病原性は強くありませんが、不適切な皮膚ケアや脂漏症などで増殖し、マラセチアに対して過敏症体質の場合、非常に激しい痒みなどを引き起こし、ベタベタした皮脂や多量のフケなどの皮膚症状がみられます。皮膚病が起こりやすい部位としては、耳、口周り、首、脇の下、内股、足先などの皮脂が溜まりやすい部分です。

抗真菌薬の内服と薬用シャンプーで皮脂とマラセチアを落とすことで治療します。


【外耳炎】
外耳炎は、鼓膜から外側の耳道で起きる病気です。不適切な耳掃除、耳ダニ寄生、アトピー、アレルギー、耳垢腺の過形成や腫瘍などによって起こります。

早期の治療と適切なケアが重要です。慢性炎症により耳道が狭窄し、内科治療が困難な場合、外耳道の摘出手術を行わなければならないこともあります。中耳炎や内耳炎に進行すると、ふらつきや眼振などの前庭障害が出ることもあります。