診療科目・予防・健康診断

整形外科・神経科

普段の歩き方や走り方、動作の小さな変化が重要なサインです

正常な運動を行うには、脳、神経、筋肉、腱、骨、靭帯、関節などが正しく機能しなければなりません。これらのどこかに異常があると、正常に動くこと(歩く・走る・跳ぶなど)はできなくなってしまいます。

その原因は、脱臼や骨折、靭帯断裂や関節炎、椎間板ヘルニアなどの整形疾患から、癲癇発作などの神経科疾患まで多岐にわたります。放置すると治療が難しくなり、命に関わる場合もあります。いつもと歩き方や動きが違う場合は早めにご来院・ご相談ください。


主な整形外科・神経科疾患


【癲癇(てんかん)発作】
通常、脳の中では規則正しいリズムで電気が流れています。正常な神経細胞は電気的なショートを起こしている神経回路に対して、それが広がらないように抑えていますが、体調や環境の変化によって電気的なショートが周囲の神経回路に広がってしまうことがあります。この時に「てんかん発作」が発生します。

てんかんという病気の定義の重要なことは「発作」が「繰り返して」起きるということです。従って1回だけの発作でてんかんを疑うことはできますが、てんかんの診断はできません。繰り返し起こる発作の間隔は個体によって違いがあり、毎日起こす動物もいれば、1月に1度という場合もあります。

発作は自然に治まりますが、慢性の脳の病気ということからこの発作の頻度は進行していく可能性があります。そして、発作が止まらなくなるような状態=てんかん重積(重延)状態になった場合には、生命にかかわる場合もあるので、早急な処置を行う必要があります。


【前庭疾患】
前庭疾患とは、さまざまな原因によって平衡感覚を失ってしまう病気です。

動物の身体には、平衡感覚を司る三半規管という小さな器官が両側の内耳に存在します。両側の三半規管が感知した頭の動きや位置が神経を通じて脳幹へ伝えられ、「平衡感覚」が生まれます。片側の三半規管やその信号を受け取る脳幹が機能しないと、世界がグルグルと回ってしまうような感覚に陥り、めまいやひどいふらつきが起こります。

首が片側に傾き、眼を見ると一定のリズムで揺れ、歩こうとするとバランスを崩したり一方向にグルグル回ってしまったりすることが非常に多く見られる症状です。また、空中に抱え上げられるとパニックになったり暗い場所や寝起きに症状が悪化したりすることが多いのも前庭疾患の特徴です。

両側の平衡感覚が異常を来たすと首の傾きや眼の揺れなどはそれほど認められませんが、特徴的な歩き方や首の動きをする事が多く、脚を上げたりジャンプをしたりする際にバランスを失ってフラつくことが多く見られます。


【認知症】
世界や日本の獣医療の進歩により犬猫も高齢社会となり、認知症の犬猫も増えてきています。

認知症には特徴的な徴候があります。具体的なものとしては、 壁や床をぼんやりと見続ける、人や動物に対する認識が変化する、家具の後ろで動けなくなる、壁や家具に向かって歩き続ける、ドアの蝶番側にいる、不適切な排泄の頻度が増加する、落としたフードを探すのが難しい、夜間に頻繁にうろつく、夜鳴きなどです。

これらの症状のうち、一つでも該当することがあれば、認知症を疑い、動物病院で診察を受けるか注意深く観察しましょう。早期発見・早期治療により改善がみられる場合が多いです。


【椎間板ヘルニア】
椎間板ヘルニアとは椎骨と椎骨の間にある椎間板という組織が変形し、脊髄を圧迫することで発生する病気です。発生部位としては胸部と腰部の移行部位で最も多く発症しますが、頚部でも発症する場合があります。椎間板ヘルニアによる脊髄障害の程度により、痛みのみの症状の場合から、運動失調や麻痺、排尿・排便困難まで起こります。重症例の中には命を落とすケースもあります。

当院ではヘルニアに対する治療に外科手術を用いることはありません。内科治療(注射・内服・鍼灸・マッサージ・漢方)を組み合わせて治療を行っていきます。


【前十字靭帯断裂】
大型犬に突然発生する後肢跛行の原因として、前十字靭帯断裂があります。靭帯の損傷の程度により、部分断裂と完全断裂、さらに半月板の損傷を伴う場合と伴わない場合があります。放置すると変形性関節症が急速に進行してしまい、元の状態に戻すことがとても困難になります。

前十字靭帯断裂の治療は早期に手術が必要です。膝蓋骨脱臼症や関節炎と診断を受けたが、跛行の改善が乏しい場合は注意が必要です。


【膝蓋骨脱臼症】
膝蓋骨脱臼症は小型犬にとても多くみられる整形外科疾患です。小型犬では内方、大型犬では外方への脱臼が多く認められます。症状としてはスキップやケンケンをしたり、後肢を後ろに蹴る仕草をしたり、痛がるなどがあります。

原因の多くは遺伝的な素因によるものだと考えられています。大型犬の膝蓋骨外方脱臼症や、小型犬の重度内方脱臼状態、頻繁な痛みや跛行症状を伴う場合は、早期の診断と外科的治療が必要です。

すべての犬で必ず手術が必要になるとはかぎりませんが、膝蓋骨脱臼症は変形性膝関節症や前十字靭帯断裂のリスク因子となりますので、適切な治療・管理が重要です。膝蓋骨脱臼症は猫でも認められる病気で、犬と同様に治療には外科手術が必要です。