診療科目・予防・健康診断

呼吸器・循環器科

総合的な判断を必要とする呼吸器・循環器疾患

呼吸器・循環器科では、鼻腔・喉咽頭・気管・気管支・肺・心臓に関連する検査や治療を行なっています。呼吸器疾患と循環器疾患は臓器の位置も近く、互いに密接な関係を持っているため、総合的な判断が必要となる場合があります。

循環器科の疾患である心臓病は、初期症状がとても軽く、ほとんど症状が出ないため、飼い主さんが病気に気付く頃にはある程度病状が進行してしまっていることが多いです。定期的なレントゲン検査や超音波検査を行うことで、早期に病気を発見し、病状を把握しながらお薬を使うことができれば、心臓病の進行を遅らせ、症状を抑えることが可能です。

“咳をすることが増えた”“運動を嫌がるようになった”などのような症状がある場合や、心臓の聴診で雑音があると指摘された場合には、心臓病の確定診断と状態の把握のためにも、心臓の形態・機能検査を受けることをお勧めします。


主な呼吸器・循環器疾患


【僧帽弁閉鎖不全症】
僧帽弁とは、心臓の左心房と左心室の間にある弁の名称です。通常は、僧帽弁の働きにより左心房から左心室への方向にしか血液は流れませんが、僧帽弁閉鎖不全症では、弁がうまく閉まらなくなることで左心室から左心房へと、血液の逆流が認められるようになります。

血液の逆流により、全身に送られる血液量は少なくなってしまいますが、しばらくの間は、心臓が頑張ることで正常時と同等の血液が全身へと送られるため、症状は出ずに心雑音のみが聞こえます。しかし、心臓の頑張りが限界を迎えると、心臓のポンプ機能が低下し左心房が風船のように膨らみます。膨らんだ左心房が気管を押し上げることで、咳が誘発されます。

さらに心臓が大きくなると、心臓だけでなく肺にも血液が溜まり、肺水腫と呼ばれる状態になります。肺水腫になると水中で溺れているのと同じような状態になり、呼吸がとても苦しくなります。

また、心臓から上手く血液を送ることができないと、肺だけでなく体中に悪影響を及ぼします。例えば、腎臓への血流が少なくなることで腎機能が低下したり、興奮時や運動時に失神したりすることもあります。

早期の内科治療によって、症状を抑え病気の進行を遅らせることができます。心臓の負担を軽減させるために体の水分量の調整や心拍数のコントロール、強心剤、血管拡張剤などを用います。


【肥大型・拘束型・拡張型心筋症】
肥大型心筋症では心臓の筋肉が厚く、拘束型心筋症では心臓の中の構造の一部が固く、拡張型心筋症では心臓の筋肉が薄くなり、どの心筋症の病気も心臓の収縮に障害が出る病気です。心筋症の多くが遺伝病として知られており、肥大型心筋症は猫に多く、拡張型心筋症ではドーベルマンなどの大型犬に多い病気です。

早期の内科治療によって、症状を抑え病気の進行を遅らせることができます。心臓の負担を軽減させるために体の水分量の調整や心拍数のコントロール、強心剤、血管拡張剤などを用います。

猫の心筋症では血栓症が頻発します。血栓は足の血管に詰まりやすく、突然後ろ足や前足が動かなくなります。治療法は状況によりさまざまですが、抗血栓薬による保存療法や血栓溶解剤などを用います。


【短頭種気道症候群】
ブルドックやペキニーズ、パグ、ボクサーなどは短頭種と呼ばれ、鼻孔から気管にかけて気道の狭窄が起きやすい特徴を有しています。短頭種で認められる外鼻孔の狭窄、軟口蓋過長、気管低形成、反転喉頭小嚢といった気道の閉塞につながる解剖学的特徴を総称して短頭種気道症候群と呼びます。気道狭窄の程度により、いびきや吸気時の努力呼吸、睡眠時無呼吸などが認められます。

短頭種気道症候群は内科治療での管理は難しく、外科治療が適応となる疾患です。また、短頭種気道症候群は年齢を重ねるごとに悪化する傾向があり、将来的に不可逆的な呼吸筋の障害につながることがあります。そのため、気道の狭窄が重度な症例では早期の治療介入が推奨されます。


【気管虚脱】
気管や気管支の内腔が虚脱して、円形の形状を維持できない状態でいる病気のことを、気管虚脱や気管支虚脱と呼びます。トイ・プードルやヨークシャ・テリア、ポメラニアンなどの小型犬で発生が多いと言われています。

主な症状は咳で、頚部の気管虚脱ではガチョウの鳴き声に似た「ガー・ガー」といった咳が特徴的です。また、咳は興奮時や運動時、首輪による頚部の圧迫により悪化しやすいです。

後天的な気管虚脱、気管支虚脱は、上部気道の閉塞、心臓の拡大、肥満などによって発生することが多く、原因疾患の治療が優先されます。

また先天性の気管虚脱をもつ症例では、吸気時と呼気時ともに気管が虚脱したままのことが多く、気管の低形成が認められます。このような先天性の気管虚脱に対しては、気管を広げる外科治療が適応になります。


【猫喘息】
猫喘息の特徴は発作様に始まる咳、喘鳴、呼吸困難などの症状です。人間の喘息発作にとても似た病気と言われています。この病気は芳香剤やタバコといった刺激物がアレルギーの原因物質となり、症状を引き起こすきっかけとなります。

治療方法はアレルギーの原因物質と考えられる刺激物を生活圏から可能な限り取り除き、猫がなるべく接触しないようにします。また、空気清浄機を導入して空気中の原因物質を取り除く方法もあります。発作発生時には吸入ステロイド剤を使用します。